リフト入浴うんち専用福祉用具!

….「福祉用具の力」というFacebookページに投稿したものです。….
福祉用具のチカラ@facebook公開グループ one of 管理人&ますいさんのリフトリーダー講師でもある窪田静です.
年末、デンマークから関空に着いたのでフェリーでふら~と立ち寄ったますいさんの施設「ぐらんど」で遭遇した、【リフト入浴うんち専用福祉用具!】にいたく感動し(私達は専用用具を探したりせず、バケツで受けたりしてました)、そういえばリフト入浴とうんちについて書いたことなかったかもなぁ...と思い至ったので、ますいさんに記事の投稿を執拗にお願いしました。
なので、文責共同で、勝手に小見出しもつけました。*~*は脚注というか、便乗(^_-)

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はじめまして。 神戸在住のますいと申します。
2015年4月に開設した療養通所介護事業所(現在は地域密着型ということになりましたが)
デイナーシングぐらんどの代表をさせていただいております。職種は介護福祉士です。
リフトを現場で運用することを、開設した自身の事業所で初めて経験いたしました。
いろいろな研修の場で、リフトの有用性について疑うところはなかったのですが、実際に日常の業務の中で使うようになってやはりいろいろな気づきがありますし、まだまだ皮膚感覚で使いこなすというところまでは到達できていないと思っています。(ちなみにリフトリーダーの資格を有しておりますが、研修を愛媛県で受け、その時に指導いただいたのが窪田静さんです。今回の投稿も、窪田さんが背中を押してくださったので、勇気をだして舌足らずですが、書き始めた次第です。)

このように短期間のわずかな経験の中ではありますが、個人的にこれはいいなと思っている、リフト使用することのメリットについて、ご紹介したいと思います。ベテランの方々にとっては、あまりにも当たり前のことで、ことさら取り上げるようなことではないのかもしれませんが、私を含め、リフト初心者や未経験者にとっては、たぶんやってみないとわからない世界があるのではないかなと思います。

リフト入浴はハイジーン吊り具で♪
一番苦労したというか、今もなかなか難しいと感じているのは、入浴でのリフト使用です。吊り具を使って浴槽に入ることについて、もっともっといろんな工夫ができるのではと考えておりますが、まだまだ経験値が少ないので、もう少し先にご紹介できることがあればいいなと思っています。

まず、現時点ではシャワーキャリー(安楽キャリー Bタイプ(分離型)モリトー製)を使うケースがほとんどです。洗体を行うにあたり、シャワーキャリーに移乗するわけですが、その際、吊り具を使用します。
当事業所では二種類の吊り具を使っています。どちらもウェルネット研究所の製品で、一つは脚分離型ハイバック、もう一つはハイジーンスリング*トイレ用という方が一般的*です。

http://www.wellnet-labo.co.jp/product/sling.html

ご自身で動くことがなかなか難しい方の場合、当初は、脚分離型ハイバックを使用していましたが、シャワーキャリーで座位を保てる程度の体幹の保持能力をお持ちの方は、ほとんどハイジーンで大丈夫だということがわかりました。
圧倒的に装着が容易になり、時間的にも作業的にも効率がいいです。

*おっしゃる通りハイジーン(トイレ用)は、身体の露出面が多いことが浴槽内でも洗うときにも有利ですし、湯船の中でずれたときの修正も容易なことから、能力(選定と使用と両方)のある介助者には最適の吊り具です。*

ハイジーンスリングは排せつ介助に使うことも多いわけですが、(臀部のあたりが大きく開くため)吊りあげているときに臀部(陰部)を洗うということも行います。
まだ慣れていないときはまずはシャワーキャリーに移乗して 吊り具 を外し、お尻を洗うのは体を左右に傾けながら(傾けた反対側は座面と臀部に隙間ができるので)そこを洗うというやり方をしていました。

しかしこの介助に疑問がありました。やはり、介助者のスキルによっては物のように傾けていて物言えぬ利用者さんは怖い思いをしているのではないかという懸念があったのです。かなりきちんと安定した姿勢を確認しながら行わなければ、不快な介助になりますし、また緊張をさせてしまいます。それならば、 吊り具 で吊り上げた状態のときに洗ってしまうほうがご本人にとっても楽ではないかと思いました。
そこで、身体的に重度な障害をお持ちではあるけれども、しっかりとお話しはできる利用者さんに、この介助をさせていただき、シャワーキャリーに移乗する前に吊った状態で、「座る前にこのままお尻を洗わせていただいてもいいでしょうか?」と尋ねると、「大丈夫ですよ」とお返事をいただけました。その際には足を床につける程度のところまで下げて吊っている状態を作ります。そのうえで体があまりゆらゆらと揺れないように一人の介助者が身体を固定し、一人の介助者がシャワーを使って洗います。

*吊り上げた状態で陰部を洗い、流せることは入浴でリフトを使うメリットの大きな部分です。対象者も介助者も負担が無いし、リフト無しには「本当にちゃんと陰部~臀部を洗い、十分に洗浄すること」はできないのではないかと思います。リフトを入れた現場では、シャワー椅子は穴無しを原則にしていました。くりぬいただけの形状のシャワー椅子の穴にどんな風に臀部が食い込むか、そこにまっすぐに着座するのはほぼ不可能であるため、座位をどれほど不安定にするか...に気づいた結果です。*

やはり気をつけないといけないのは、ご本人が不安定にならないこと、不快な介助にならないようにすること、手際よくすることは大事ですし、ご本人がちゃんときれいに洗ってもらえているという感じがしているか、ということかなと思います。
シャワーをかける方向は体の前から後ろ方向です。こうすると 吊り具 が全く濡れませんし、向きとしてもいいと思います。(お尻をペーパーでふくときも前から後ろであるように)

*前から後ろへにするのは尿路や膣への感染を防ぐため*

リフト入浴はうんちが出る!?
そういう介助を回を重ねる中、行うようになっていったわけですが、その時に起きたことが、シャワーキャリーに座る前に 吊り具 で吊った姿勢でお尻を洗う・・その介助時に、便がよく出るのです。それまではお尻を洗う時、キャリーに先に座るので、体を洗い終わり、体幹を傾けてお尻を洗おうとしたら便が出ているということも多々ありました。

でも今はまず、吊った状態でお尻の状態を観察し、お腹が張っていたら、便がでないかどうか、を見ます。人によっては、利用日入浴時に必ず便を出すという方、ほんとに吊った姿勢になったらもうお約束のように便が出る方がいらっしゃいます。これは経験的に、ポータブルトイレに座った姿勢と比べてもかなり出やすい状況になっているのではないかという実感です。吊った姿勢はある意味そこまで前傾姿勢になっていない場合もありますが、臀部の空き具合とか吊られているという姿勢そのものが腸を刺激するのかもしれません。

*200リフト事例/10年@在宅 + 数十箇所の病院・施設全てにリフト装備の私達の現場で、「リフト入浴で出やすくなる」は常識でした。吊っている時だけでなく,浴槽内で浮かんでしまうこともあります。大変尊厳を傷つけるシーンなので、懸念される場合は入浴前にきっちり便を出しておくべきかなと思っています*

*排便と姿勢について深まる本、ご紹介*
THE BATHROOM バス・トイレ空間の人間科学 3刷 著者=アレクサンダー・キラ 訳・監修者=紀谷文樹発行年月=1989年11月
体裁=B5判変型(180×240mm)、並製、368頁 定価=本体3,689円+税

http://www.toto.co.jp/publishing/detail/A0006.htm

リフト入浴うんち専用福祉用具!
そういう状態になって、かなりいいなと思ってはいたのですが、気になることとして、足を床につけている状態ということで多少不安定感は軽減しているとはいえ、やはりぶらぶらと体が動くということです。介助者の一人がしっかり支えていることがずっとできるのであればまぁまぁいいのですけど、その点と、やはり排便となると、場合によっては長く時間がかかってしまうこともあります。いくら出やすい姿勢であるとはいえ、ハイジーンスリングで吊ったままで長い時間を過ごすのは少し大変だと思いました。

そこで、排せつにも使用できるシャワーキャリー(便座のような椅子の)を使い、 吊り具 で吊りつつもお尻を少し乗せられているという形をとるのがいいな・・・と思ったのですが。すでにシャワーキャリーはあるし、この狭い浴室に二種類のシャワーキャリーは邪魔すぎる・・。と思いました。排便時にお尻を少し乗せたいだけなのですから、なにか作れないか・・簡単なものはないか・・といろいろ探した結果。
ありました!!災害用の簡易便座です。

         (災害時はゴミ袋をかぶせて使用するようです。折り畳み式)

以下の画像のように使用しています。

お写真使わせていただいている利用者の方はお話できないので大変恐縮ですが、ご家族にご了承頂いただいています。ありがとうございます。

これは小さくて邪魔にならずとてもいいです。
そして、ハイジーンスリングは開口部分が広いですし、シャワーの使い方で 吊り具 をしたままでも全く水でぬれたり汚染したりせずに行えます。
さらに上体に関しては、必要に応じ、クッションなどを挟んで姿勢を整え、排せつの間が安楽に過ごせるように配慮しています。

リフトを使用しての入浴は、窪田さんが、脚注*~*で指摘くださっているように、浴槽内でずれる、浮くという状況を介助者が適切に、かつ介助者自身にも負担をかけずに対処していく、というあたりがまだまだ難しい部分であろうと思っています。まだまだ勉強したいです。

それはそうとしても、本当にリフトを使っての入浴の快適さ、素晴らしさを、もっと現場が知るべきだということは、間違いありません。ですが、設置されているところが少なく、まだまだ触れたことがないという専門職が多いことは、本当に残念です。
導入に費用がかかりますが、特浴などの設備に比較したら、本当にコストパフォーマンスが良いと思いますし、何より構造がシンプルで、扱いもメンテナンスも単純でやりやすいところなど、ほんとうによいものです。
あとはもっと普及して、コントローラーは、もっと工夫されて使いやすくなってほしいですし、吊具はもっともっといろんな改善があって扱いやすいもの、用途によって使い分けができるもの、ちいさな便利グッズ(特に入浴用)あればいいな!なんてつらつら思う、今日この頃です。

最後に、リフトによる入浴介助に関して、リフトリーダー研修で、実際に浴槽に湯を張り、吊具装着し、入浴体験をするという実習があったこと、そういう体験が必要だと思われ、研修を組み立てられた窪田さんに、尊敬の念とともに、本当に感謝しています。この場をおかりして、心からお礼を申し上げます。あの経験がなければ、わたしは本当に自信をもって、リフトでの入浴介助ということを職員さんたちに対して、指導できなかったと思います。
そして、いつか自分の事業所で、リフト浴の研修をしたいです。
できれば窪田静さんに来ていただいて(爆)などと勝手な妄想は広がっております。
長々と失礼致しました。 最後まで読んでいただいてありがとうございました。